お仏壇のお洗濯・修復・交換等で、新品同様に。真宗大谷派、三重県桑名市長島町のお客様

ホームページをご覧いただきまして、ありがとうございます。

日本を代表する産地彦根で、こだわりの手造り仏壇を製造しております、井上仏壇の井上昌一と申します。

三重県桑名市長島町にて、お仏壇のお洗濯をさせていただきましたので、ご紹介いたします。

 

【お洗濯(漆で仕上げるおすすめコース) 三重県桑名市長島町のお客様  真宗大谷派】

 

ホームページをご覧になったお客様からお電話でご相談をいただきました。「父のお年忌までにお仏壇のお洗濯をしてもらえますか?」というお問い合わせでした。ご連絡をいただいたのは昨年末で、お年忌は翌年の5月ということでしたので、「間に合いますよ」とお返事をして、まずはお見積りのためにお宅まで伺うことになりました。

 

こちらがご相談いただいたお仏壇です。昭和30年代ごろに作られた、とても立派な桑名壇でしたが、拝見したところやはりお洗濯が必要な時期を迎えているようでした。お洗濯が必要な時期のめやすとしては、漆塗り部分のツヤがなくなってしまったり、金箔がはがれていたり、お線香や蝋燭の油煙で茶色く汚れてしまっている等のチェックポイントがあります。こちらのお仏壇もこうしてお写真で見るととても立派で、きれいにお参りをされているようなのですが、実際に見ると、全体的に色あせた感じになっていました。お客様は当初から、部分的な修復やお洗濯ではなく、全体的に本格的なお洗濯をしたいとご希望でしたので、お仏壇の状態を実際に確認すると、お客様とお話をしながら、ご希望を叶えられるお洗濯の方法や費用をご説明し、傷んでいるところは個別に取り換えることができることなどもご提案して、その場でお見積りを差し上げました。当店は、できる限り即日その場でお見積りを差し上げるようにしています。ご検討の結果、お洗濯をお任せいただけることになりました。

「お仏壇のお洗濯」については、こちらをご覧ください>>「洗濯・洗浄

 

お引き取り・解体

後日、お仏壇をお引き取りにうかがい、工房へ持ち帰りました。仏具や掛け軸等は取り外して、別途保管・修復等を行います。

扉を閉めた状態です。本来は、鏡面のようにツヤツヤしているものなのですが、艶消しのような状態になってしまっています。ほこりもたくさんついていました。金具もずいぶん色つやがなくなっています。これからお仏壇を解体して、洗浄や修復等を行っていきます。

 

解体中です。左は上台輪(かみだいわ:お仏壇上部の3段の屋根の部分)を外したところです。右は解体が進み、須弥壇を裏側から見たところです。取り外す際は、どういう風に取り付けてあるのか、彫刻はどのように配置されているのかなども、後日組み立ての際のため必ず写真に収めておきます。

洗濯・洗浄

すべての解体が終わり、手洗いで洗浄作業を行っています。手前の職人は、須弥壇の天板、奥では側面の板を洗浄しています。水をかけて洗浄する従来からの方法もありますが、木が割れたり反ったりダメージを与えてしまうため、手間がかかっても当店では手拭きで洗浄をしています。

 

彫刻や金具、仏具等もすべて分解して洗浄したら、乾燥するまで陰干しします。

 

木地直し

次は、木地直しです。今回は、傷んでいた雨戸(扉)と障子の交換を行いました。反ってしまっていましたので、新しく作成したものを仮に設置したところです。

 

こちらは「別台輪」といって、お仏壇を設置した際に一番下にある台輪で、この部分だけ取り外せるようになっています。湿気が入りやすい部分なので、写真のように虫食いが見られました。確認時には分かりませんでしたが、分解してみて判明し、新しいものを同じ寸法で作り直して交換しました。

 

印の部分、礼盤の交換も行いました。木地直しを終えたら、きちんと仕上がっているか仮組をして確認して再度解体、このあとの「塗り」の工程に入ります。

 

塗り上がり

塗り直しが終わりました。光沢が戻り、とてもきれいな仕上がりです。お仏壇内部の側面などの艶消しで仕上げている部分は、このあと金箔を貼る部分です。金箔を貼った時に、あまりピカピカに光りすぎないようにするためです。

 

側面は黒漆のツヤ塗り、正面の少し赤みのある部分は木目が見えるように透明の漆を使用した木目出し塗りです。内部に少し見えている赤い部分は須弥壇の朱漆で、塗る部分によって漆も様々です。何度も塗りの工程を繰り返して、このように艶やかな輝きのある鏡面のような仕上がりになります。

 

金具修理交換

金具も、古くなったり壊れているものは修理・交換します。左の金具は雨戸の丁番で、色の鮮やかな部分は真鍮で補強した部分です。右側も雨戸の金具で、こちらは新しく作り直しました。

 

こちらは障子の丁番です。右の古金具の中央部分は、開閉するたびにこすれてすり減ってしまい、少し隙間が空いているのが分かります。こちらは全体的に取り換える必要があるので、形は以前のものと同じで、厚みも増したものを新調しました。

 

組立

組み立てに入ります。先ほど艶消しで漆を塗っていた側面には、金箔を貼り終えています。

 

慎重に両壁をはめ込んでいきます。ご納品先によっては、こちらで一旦組み立ててから運んだり、お客様宅で組み立てる場合もあります。

 

本尊・両脇 表装直し

ご本尊と両脇の掛け軸は、今回表装をし直しました。

【表装直し前 表】

【表装直し後 表】

【表装直し前 裏】

【表装直し後 裏】

絵が描かれている本紙をはがして、本金糸を使用した表装「本金襴」で表装、左右の本尊は以前と同じ柄で、左右の両大師は柄を統一しました。せっかく作り直すならということで、お仏壇に合ったサイズに変更しています。

 

納品

ご納品の際の様子です。金箔や漆塗り部分など、全体的に輝きを取り戻しました!

今回、仏額も一緒に額装をし直しました。文字の書かれた紙だけをはがして染み抜き加工をし、汚れをできるだけとって額装し直し、新しい枠に入れます。汚れが付きにくいよう、アクリル板も入れました。

 

ご本尊の上にはLEDのスポットライトを設置しています。手の届きにくい場所なので、長持ちするLEDは大変ご好評いただいています。手前の蝋燭・灯篭もLEDです。安全かつ使いやすくなっています。

 

金具や木地の交換を行った扉やお障子も、より丈夫になってきれいになりました。取り換えた部分ときれいにして再度使用した部分が分からないくらい、すべてがきれいになっています。今回のお仏壇は桑名壇でしたが、当店は色々なタイプのお仏壇を取り扱っていますので、彦根仏壇ではないお仏壇でも、お洗濯や修復等も問題なくお任せいただけます。以前からご縁があって三重県でもお仕事をさせていただいており、今回の桑名壇も多数の実績がありますので安心してお任せ下さい。

お客様には、ご希望いただいていたお年忌までにという期日にもギリギリで間に合い、「立派なお仏壇でお年忌を迎えることができてよかったです」と喜んでいただけました。あまりにきれいになったので、おばあさまが、「これ、本当にうちの仏壇?」とびっくりされていました^^ このたびは、当店にお声かけいただきましてありがとうございました。今回のお洗濯で、木地や金具等の修理・交換等で丈夫に生まれ変わりましたので、また60年,70年と受け継いでいっていただけると思います。これからもどうぞ末永く、大切にお参りくださいませ。

長い時間を経て古くなってしまったお仏壇も、このようにお洗濯して手を入れておくことで、次世代だけでなくその次の世代まで受け継いで残していくことができるようになります。次にこのお仏壇を修復する頃にはもう私はいませんが、その時は「先人の仕事ぶりはすばらしい!」と言ってもらえるように、これからもひとつひとつ誠実に取り組む一方で、こうした修復等に不可欠となる優れた職人の技術も大切に伝えていきたいと改めて思いました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。