彦根金仏壇の製作工程のご紹介(前半)~熟練の職人の技術をご紹介いたします~

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日本を代表する産地彦根で、こだわりの手造り仏壇を製造しております、井上仏壇の井上昌一と申します。
今回は、秋田県の寺院様よりいただきました、彦根金仏壇の製作の様子をご紹介いたします。この回では、全工程の前半部分を見ていただきたいと思います。

 

【受注生産のお仏壇 3月末ごろ完成ご納品予定】

 

秋田県の寺院様より、ご住職様のご自宅用のお仏壇をご注文いただきました。遠く秋田県のお寺様からご注文をいただくことになった経緯は、お寺様ならではの理由が発端でした。
一般的に、お寺様のご本堂にある仏具等のかたちは、京都のお仏壇に似ているものが多いです。そのため、今回ご自宅用のお仏壇をお求めになるにあたり、ご本堂と同じかたちのものをということで、自然な流れでまずは京仏壇を見て回られました。
ただ、ご希望のサイズの京仏壇ですとかなりの高額で、予定のご予算をオーバーしてしまうためにお困りでした。そんな時お知り合いの方から彦根仏壇のことを聞かれて、今度は彦根の仏壇店を見に来られました。他のお店も見てまわれた中で当店のお仏壇を気に入ってくださり、ご注文をいただくことになりました。

お仏壇の完成予定は3月末ごろで、現在漆塗りの工程に入ったところです。今回は、そんな受注生産のお仏壇の、製作工程の前半部分をご紹介してまいります。

 

彦根の金仏壇は、大きく7つの工程を経て造られています。
①木地師(きじし)、②宮殿師(くうでんし)、③彫刻師④漆塗師(うるしぬりし)、⑤金箔押師⑥蒔絵師(まきえし)、⑦錺金具師(かざりかなぐし)と、各工程の熟練した職人たちが仕上げ、金仏壇を造り上げていきます。

彦根金仏壇製作の工程はこちらでもご覧いただけます⇒

 

こちらは、お仏壇の中央にある、宮殿(くうでん)と須弥壇(しゅみだん)です。宮殿は、宮殿師(くうでんし)と呼ばれる職人が、須弥壇は木地師(きじし)が造ります。お寺のご本堂の場合は、この須弥壇が下に置いてあって、宮殿がその上にありますが、今回はご自宅用のお仏壇のため、これを木地(仏壇の土台となる、塗る前の状態のもの)の中に置くことになります。ご本堂の宮殿・須弥壇を縮小したようなかたちです。

 

宮殿の上部です。真宗大谷派(お東)のため、「瓦葺の2重屋根」が基本となります。とても細かく精巧な職人の仕事です。

 

須弥壇です。こちらは木地師が作成したもので、京都風に仕上げています。今回はお客様のご希望で、全体的にできるだけ京都風に仕上げています。通常の彦根風ですと、この須弥壇のかたちも少し違ってきます。

 

この宮殿と須弥壇を、木地師が作成した木地に設置すると、このようになります。

 

障子を閉めるとこういった状態になります。最終的には金具で障子を取り付けます。

 

「雨戸」と呼ばれる扉を閉めた状態です。中央にある棒状のものは、定木(じょうぎ)といって、右からふたつ目の扉に取り付けて、扉のちょうど真ん中にこの定木が来るようにします。閂(かんぬき)のような役割です。

 

お仏壇内部です。お仏壇の作りとしては最高級の「御堂(みどう)作り」というもので、ご本堂を模したかたちです。

 

天井部分は「折り上げ式格天井(ごうてんじょう)」という、こちらも最高級の作りです。お寺だけでなく、二条城の二の丸御殿・日光東照宮など、伝統的な格式の高いところで使用されている様式です。

 

木地と宮殿が出来上がると、彫刻の工程に入ります。実際に出来上がったものの寸法にあわせて彫刻師が彫刻を作成していきます。こちらはスズメ狭間(ざま)という、宮殿の屋根部分の両脇の狭間に施す彫刻のご提案をさせていただいた際の内容です。側面には「素牡丹」という図柄を配し、正面には東本願寺本山の阿弥陀堂「桐鳳凰」という彫刻のデザインを使用させていただいて、それを2つに分割して配置してはどうでしょうかとご提案しました。

 

完成したスズメ狭間「素牡丹」の彫刻です。左右一対で2つを、同じデザインで左右対称で作成することもできますが、今回はあえて非対称のそれぞれ違うデザインでお作りしました。

 

こちらはスズメ狭間「桐鳳凰」の完成品です。桐の木と鳳凰のデザインです。狭間彫刻のデザインは、「孔雀牡丹」「獅子牡丹」など、ふたつのモチーフが描かれたものが多くあります。こちらも左右非対称で、向かい合わせになるように作ります。少し斜め横から見ると、立体的に作り込まれているのがよく分かり、活き活きとした躍動感のある仕上がりです。

 

次は、前狭間(まえざま)の彫刻です。上部にある、横に長い狭間が前狭間で、こちらにも彫刻を施します。

 

こちらは、今回ご注文をいただいたお寺様にある欄間の彫刻です。お写真を送っていただいて、それを参考にまずは下絵を作成しました。

 

こちらが作成した下絵です。まずは彫刻師が手書きでこうした下絵を作ります。下の画像は拡大したものですが、立体感を出すため、下絵の段階から手前や奥などの構成も考えて描いてあるのが分かります。こういったところも彫刻師の仕事のひとつです。

 

完成した前狭間の彫刻です。立体的な孔雀と牡丹が、細部まで緻密に彫り込まれています。

 

お仏壇に施すすべての彫刻が完成しました。スズメ狭間、前狭間の彫刻以外にも、須弥壇や中屋根の脇狭間などの彫刻も合わせて、お仏壇にはこうしたたくさんの彫刻を付けることになります。

この木地や宮殿・彫刻は、このあと塗りの工程を経て、その上に金箔を施していきます。

ここまでは、お仏壇作りの全工程の前半に当たる、①木地師②宮殿師③彫刻師の仕事を見ていただきました。次回は、④漆塗師⑤金箔押師⑥蒔絵師⑦錺金具師の仕事をご紹介したいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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